「精神と時の学校」で学んだこと

「1日が365日」とまではいかないけれど、いた時間以上に多くのことを学んだ学校。そこで学んだことを紹介します。

タイヤ運び必勝法 2

前回、タイヤ運び必勝法1として、「タイヤを落とさない様にするにはどうすればよいか」という課題を位置づけ、子どもたちが自分たちで考え、動くようにすることを書きました。

 

今回必勝法の2です。

 

それは「一つのことを追究させた。」ということです。

 

子どもたちは練習を重ね、ずいぶんとタイヤを落とさなくなり、運ぶのが上達してきました。

 

しかし、落とさないことばかりを意識していて、スピードがあがらない組もあります。

そんな姿を見ていた教育実習生が私に言ってきました。

 

「先生、少しスピードあげるように言ったらどうですか?」

 

私も正直、そうしようかと迷いました。

しかし、「落とさない様にするにはどうすればよいか」だけで通すことにしました。

 

そして迎えた運動会当日、 子どもたちを教室に集めました。

 

そしてこう言いました。

 

「今までみんなの力だけでよく頑張ってきたね。だから先生は、今までみんなのやり方に口出ししなかったんだよ。でも最後に一つだけ。絶対に勝てる方法をみんなに教えるよ。それは・・・。」

 1年1組みんな真剣に私の言葉に耳を傾けていました。


「2組と3組の方を見ないことだよ。」


「失敗してもいいんだよ」とか、「最後まであきらめないことだよ 。」などを予想していたのか、驚いた表情の子もいました。


私はこう続けました。

「今まで、みんなはタイヤ落とさないためにって頑張ってきたんでしょ。相手は誰?2組や3組だった?違うよね。相手はいつも自分たちだったでしょ。

だから、最後まで自分たちと勝負するんだよ。

 

1回も落とさなくって、それでも2組や3組の方が速かったなら、 それは仕方ないよね。

『落とさないように」頑張ってもそれでも落とすことはあるから、 それも仕方ないよね。

 

でも、最後の最後で、2組や3組を気にしてしまって、練習のときと全然違うことやって。それでタイヤ落としたら、とっても悔しい でしょ。

 

だから、2組や3組は絶対に見ない。練習でしてきたように。タイヤを落とさないことだけ考えながらやるんだよ。

 

そうすれば絶対にみんなは勝てる。」

(記憶が曖昧なので客色あり。)

 

みんなは「はい!」と元気に返事をしました。


「運動会の団体競技に必死か!!」と突っ込みたくなる人もいるかもしれません。

もちろん私自身、大人気なくタイヤ運びに勝つことに真剣だったわけではありません。

(確かに「精神と時の学校」にはそれほど真剣になる雰囲気はありましたし、なにより子供も必死でしたが、、、)

ただ、子どもたちに「一つのことを追究するよさ」を味わわせることに真剣だったのです。

 

「落とさないためにどうするか」の一つだけを追究させることで、子どもは自分たちで考え、自分たちで動けるようになる。そして 旗を回るスピードや次の組との交代のスピードも自然にアップしてくる。

結果的には、二つのことやたくさんのこと追究させるよりも成果がある。

 

子どもって。子供の集団の意識って。そういうものなんだということがはっきりわかりました。

 

これは授業にも通じることだと思います。

「一つのことを追究させる」ことは、問題解決的な学習の基本といえるでしょう。

いくつものことについて考えさせるのは、言わば「一問一答式の学習 」。または教師が都合のいいように課題をすりかえてしまう、「子どもの思考にそっていない学習」でしょうか。

 

   問題解決的な学習が大切だと特に言われだしたのは、子どもの意識、そして集団の意識として、子供たちの力を伸ばすために一つのことを追究させていくことが特に有効な学習なのだということが、今改めて見直されているから。そんなことをあのタイヤ運びの取り組みを通して思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。